海辺のカプール

今回は、既存の風景素材のパースにあわせて模型を撮影して合成を頑張るというテーマで制作をした。ライティングは適当だったが、レタッチでうまくごまかせた感じだ。

 

以下、制作過程。
 

まず、風景写真はここの素材サイトの pakutaso 断崖絶壁の房総半島 という写真を利用させてもらった。この海辺の写真に配置して似合う被写体を手持ちの完成済みの模型から探してみる。


今回の模型はこれ。べたに水陸両用MSであるカプールを選択。5年くらい前にガッシュと油絵の具で仕上げたもの。(国外にいたためラッカー塗料が手に入らず。) サフも吹いてないので、ところどころ禿げてしまい下地が出てきてしまっていたのをファレフォでちょちょっと修正してやった。当時も雑に制作したものだが、オリジナルのカラーリングは、まあまあ気に入ってる。
 


パースを海辺の写真と合わせて撮影するために、今回は丁寧に位置と角度を計算した。まず3Dソフト(今回はメタセコイア)でラフなモデルと退避比較用の棒人間を作成する。MSの大きさは16.5mとした。人間は1.8m。モデリングは15分くらい。
 



このモデルと背景写真をAdobe Dimension CC という2D写真と3Dモデルを組み合わせたグラフィックを作る専用ソフトに読み込んで、レイアクトを検討する。風景の正確な大きさはわからないので、ここは感で配置している。
なお、Dimension は操作が簡単で、高度なレンダリングエンジンを備えており、1枚の写真画像からAIを利用して撮影に使われたカメラの画角と角度を割り出してくれる大変優れ物である。さらにいうと擬似環境光と太陽やライトの位置の解決も行ってれる。クリエイティブクラウドに入っていれば追加料金が発生せず使えるので、3Dソフトにしては激安である。これを今回は写真の合成のための構図決定、および水面の映り込みの作成などに使っている。
 


Dimensionではカメラの位置を可視化してくれないので (ダミーで何か物体をおいてもいいのだが)、算出された座標をMAYA上で再現した。その後、モデルの大きさを実際の模型の10cmほどに縮小し、カメラの位置も相対的に正しい位置に移動してある。モデルから20cmほど、高さが3cmほどが狙ったパースを出せるカメラの位置だとわかった。 (レンズの歪みを除けば、パースのかかり具合はレンズが広角だろうが望遠だろうが関係なく、被写体との距離のみで決まる。広角のほうがパースがつくイメージがあるのは、被写体が小さく写るので、そのぶん近づくのが主な理由+あと周辺部の歪み。) この距離計算の答え合わせを可視化したかったのでMAYAを利用したが、この過程は手計算すればSKIPできる。距離のみを算出すればいいのでそこまで辛くはなさそうだ。カメラの傾き角度に関しては後述。
 


カメラの位置からみたモデルの図。この構図をお手本にして、写真撮影を行った。カメラはあいかわらず、スマホのエクスペリアXZ。
 


撮影した写真を雑にフォトショップ上で合成してみた様子。まあまあ良いのではないだろうか。下に方眼がおいてあるのは、パースが正しいか確認するため。緑色のマットを使ったので、モデルに緑色が写り込んでしまった。(のでフォトショップで補正した。)自動でマスクを作りやすいかと思ったが、逆効果だったので、次回はグレーのものにしたい。カメラの角度に関してはMAYAのお手本画像で床のグリッドが後方でなくなる位置が実際はキットの後ろ15cmの位置なので、そこを緑色のマットの終点になるようにして、上下で見て足のふくらはぎの位置にラインがくるように調整した。こんな調整のしかたで結構うまくいった。

なお、いつのまにか右下にいる人物の3Dモデルは、これまたAdobeの Fuse CCMiximo というサービスを使って Dimension 上に配置している。好きなアバターを作って好きなポーズ(というかモーション)をさせて使えるサービス。日本人好みのモデルは少ないが、非常に良いサービスだ。実は、今回一番リッチな素材はこいつかもしれない。ダミーながら海辺の環境光を受けているので、場面になじんでいる。 Dimension すごい。

あと、この時点で水面になにか写り込んでいるが、これは先のダミー3Dモデルを水面においた透明ガラス板ぽいマテリアルに反射させたもの (をフォトショップで加工したもの)透明ガラス板の法線マップに適当にフラクラルノイズか何かを元にしたものを当てている。ので波打ってる。


こんな感じの法線マップ。(実際は1024x1024px) 適当にやっつけで作ったがいい表現になった。


撮影した写真をマスクで抜いて、ディティールを加筆したもの。マスクはパスなどで地道に対応。写真に比べてかなりディテール不足だったので、パネルライン、汚し、製造番号、サビ、白いラインなどを追加した。本当はここまで模型側で対応したいものだが、時間がないのでデジタルで我慢する。あとどうしても細部がぼけて眠い感じだったので、パーツの境目にパスで細い黒いラインをかなり雑に書き込んでいる。合成時は縮小されるので、いい感じに馴染むはず、との目論見で結果的にはその通りうまく馴染んだ。この作業は一時間くらい。
 


あとはひたすら環境光を意識して、写真をなじませるレタッチをした。もはやくわしく説明できないので、箇条書きにすると、

  • モビルスーツの右側は岩肌の茶色が映り込むように乗算などで色味をつける。
  • モビルスーツの左側は海や空の色が映り込むようにスクリーンやオーバーレイで色味をつける。
  • 空や海のあたりはモビルスーツの後ろから前側に光が回ってくよう、ぼかしで食い込んでくるようにした(リムライト表現)。
  • 水面にはモビルスーツの色が、モビルスーツには水面の色が映り込むように色をのせる。
  • 波で足元をごまかす。
  • 曇り空なので模型写真のハイライトをおさえてマットな質感に見えるように調整。
  • その他全体がなじむように控えめのモヤやノイズや光をのせる。空気感の演出で、上部や後方の方が濃いめ。
  • モノアイと腰のピンク部分は覆い焼き加算で鈍く怪しく光らせた。

などの対応をしている。とにかく環境光と方向性のライトを意識。

水辺の映り込みに関しては、さらにこのレタッチ済みの写真のモビルスーツ部分を板ポリとして Dimension に配置して床に写り込ませたレンダリング結果を、追加でうまくなじませて使っている。ダミー3Dモデルは右側の岩場に映り込む影を作り出す役目でも活躍。

最後にしあげの色彩調整とビネット表現を追加して完成とした。レタッチは5、6時間くらい。
 

まだ背景写真にくらべてMS本体がのっぺりしてしまっているが、ぱっと見はまあ馴染んでいるし、今回は良しとする。MSのディティールアップはまた別の素材でちゃんと突き詰めたい。




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利用したキットはこれ。(Amazonリンクです。) お買い得だったな。安い。

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